大ヒット中の『新聞記者』は、松坂桃李のスーツ姿が堪能できる映画! その魅力と見どころを全力で語る!

おたのしみ

5月に公開された『居眠り磐音』に続き、2ヶ月連続の公開となる松坂桃李主演映画『新聞記者』が、6月28日から劇場公開されました。

日本でもリメイクされた韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』や『怪しい彼女』で強烈な印象を残した、韓国の若き演技派女優シム・ウンギョンを相手役に迎えたことでも話題の本作ですが、若きエリート官僚を演じる松坂桃李のスーツ姿が全編にわたって楽しめる点も、ファンにとっては大きな魅力と言えるでしょう。

更にSNS上でも話題となっている通り、7月3日の時点で既に興収1億円を突破するなど、大ヒットを続けている本作。実際、今回鑑賞した渋谷のユーロスペースでは、平日の最終回にも関わらず幅広い層の観客で満席状態でした。

そこで今回は、既に観た人のレビューや感想でも多くの絶賛評が寄せられているこの『新聞記者』を、ご紹介したいと思います。

ストーリー

東都新聞の記者・吉岡(シム・ウギョン)のもとに、大学新設計画に関する極秘情報が匿名のFAXで届いた。

日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育ち、ある強い思いを秘めて日本の新聞社で働く彼女は、真相究明のために取材を始める。一方、内閣情報調査室(内諜)の官僚・杉原(松坂桃李)は葛藤していた。「国民に尽くす」という自身の信念とは裏腹に、与えられた任務は現政権に不都合なニュースのコントロール。愛する妻の出産が迫ったある日、彼はひさびさに尊敬する昔の上司・神崎(高橋和也)と再開するが、その数日後、神崎はビルの上から身を投げてしまう。

真実を追い求める若き女性記者と、巨大な”闇”の存在に気付き、選択を迫られるエリート官僚。二人の人生が交差する時、衝撃の事実が明らかになる!

ズバリ、見どころはここ!

『新聞記者』というシンプルな題名や、実際の事件を連想させる内容などから、きっと固くて難しそうな映画なのでは?そんな印象をお持ちの方も多いかと思います。

でも大丈夫、本作に関しては、そんな心配は一切無用!

何故なら、事件の真相を追う女性記者・吉岡の孤独な私生活と、自身の信念と仕事とのギャップに悩んでいた若き政府官僚・杉原の幸福な家庭の対比により、この二人の出逢いがお互いをどう変えていくのか、そして杉原が自身の家庭と事件の真相解明のどちらを選択するのか?観客の興味が最後まで持続する上に、人間にとっての正義や善の部分が試される人間ドラマとして、充分楽しめる内容に仕上がっているからです。

更に、日本と韓国の二つのアイデンティティを持ち、アメリカで教育を受けてグローバルな考えを持つ女性記者と、都合の悪い証拠や真相を闇から闇へ隠蔽する日本的な体質との対比を盛り込んだ内容は、実に見事!

今回、松坂桃李が演じるのは、内閣情報室の若き官僚・杉原。現政権にとって不都合な情報をねじ曲げたり、対立する人物のスキャンダルをねつ造するなど、自分の理想とは真逆なその仕事内容に日々葛藤しながらも、上司の指示には逆らえずに生きている男です。

愛する妻、そして生まれたばかりの子供との幸せな生活の中、尊敬する元上司・神崎の突然の自殺が、彼を正しい道へと向かわせることになりますが、その先には深い闇が待っていることに・・・。

「愛する妻と生まれたばかりの子供に対して、果たして自分は誇れる生き方をしているのか?」

信頼する元上司が秘密を託したまま無念の死を遂げたことで、自身の生き方に疑問を抱き始めた杉原が、同じく事件の秘密を追う女性記者・吉岡と出会い、次第に事件の核心へと迫っていく!今回は特に観客の心をガッチリ掴むのが、映画終盤の展開です。

国家権力の介入により、父親の名誉を奪われた”過去”を持つ吉岡と、逆に愛する家族や自身のキャリアの”未来”を握られてしまった杉原。
この二人の境遇の対比によるラストの衝撃は、「この先の展開について、誰かと語りたい!」そう思わずにはいられないほど!

巨大な国家権力によって、個人の生活や未来が人質に取られる現実を見た杉原が、果たして何を選択し、どう行動するのか?

この難しい題材に敢えて挑んだ勇気が、多くの観客の心を捕らえて離さない本作。全力でオススメします!

最後に

注:以下は若干のネタバレを含みますので、未見の方はご注意の上でお読み下さい。

本作の製作に関して、政治色の非常に強い作品に出演すると特定のイメージがつくということで、多くの日本人女優に出演を断られた、そんな報道を目にした方も多いのではないでしょうか。

実は今回、韓国の演技派女優シム・ウギョンが日本語で演技をすると聞いて、若干不安を抱きながら鑑賞に臨んだのですが、セリフに関しての違和感は殆ど感じられませんでした。

確かに映画の中で、シム・ウギョンのセリフ自体は少な目なのですが、彼女の起用が大成功だったことは、本作の大ヒットが見事に証明したと言えるでしょう。

国民に真実を伝えるため、事件の核心に迫って行く杉原と吉岡ですが、やがてある医療系学園の設立の裏に隠された、恐ろしい計画を知ることになります。

今回この様な内容の作品を敢えて世に送り出した理由、それは現在のマスコミ報道のあり方に対する不満や不信感が、国民の間で急速に高まっていることの証明に他なりません。

ただ、活字媒体である新聞社が最後の砦のように真実を報道する展開、更に記事を掲載するにあたっての裏取りや、万が一誤報とされた場合の対策など、ネットと活字媒体の性質の違いも、ちゃんと描かれている本作。

中でも吉岡の書いた記事が、ある大きな動きに現繋がる展開は、正に日本のジャーナリズムの自浄作用と、将来への希望を与えるものとなっているのです。

更に本作では、国家という巨大な存在を相手に個人の生活や家族が人質に取られた時、それでも人は自分の信念や心の声に従って、正しい行動を選択できるのか?という、正に人間の本質に迫るテーマが描かれることになります。

それだけに、本編中で杉原の上司である多田が言う、「日本の民主主義は、形だけでいいんだ!」のセリフの衝撃は大きく、ツイッターやSNSでの投稿が内閣諜報室によってねつ造・情報操作されている描写も含めて、今後自分のツイッターのタイムラインを見る時に思わず疑いたくなるほど!

実際、最終的な判断を我々観客に委ねたとも取れる、ラストの深い余韻と衝撃には、今回色々な意味で非常に難しい題材に挑んだ、製作陣の勇気と熱意を感じずにはいられませんでした。

特に、ラストシーンで見せる杉原と吉岡の表情の対比や、二人を隔てる距離感でそれぞれの置かれた状況を伝える演出は素晴らしく、ここで松坂桃李が見せる”目の演技”は、正に彼の演技力があればこそ!

果たして、巨大な陰謀を暴こうとした二人に待つ衝撃の結末とは何か?

鑑賞後、杉原の最後のセリフに対して誰かと感想を語りたくなるそのラストは、是非劇場で!

公式サイトはこちら

滝口アキラ
ライター:滝口アキラ「シネマズPLUS」公式コラムニスト、雑誌「昭和40年男」ライター。専門は映画コミカライズ研究。