『マーベラス・ミセス・メイゼル』は、コメディ版『アリー スター誕生』!その見どころと感想

おたのしみ

お正月の疲れやインフルエンザの流行などで、家で休養する機会も多くなるこの時期。そんな時に観ると、大いに笑えて元気を貰える海外ドラマがこれ!

今回は、Amazonプライムで現在シーズン2まで配信中の、Amazonプライム・ビデオ、オリジナルの人気コメディシリーズ、『マーベラス・ミセス・メイゼル』の見どころを紹介します。

あらすじ紹介

物語の舞台となるのは、1958年のニューヨーク。

大学時代に出会った理想の彼氏、ジョールと結婚し、二人の子供をもうけて豪華なアパートで幸せに暮らす、26歳のミッジ・メイゼルが本作のヒロインです。

ところがある日、夫のジョールが離婚したいと言って家を飛び出したことで、この幸せな生活が一気に崩れ去ることに。しかも、ジョールの浮気相手が彼の秘書だと知らされたミッジは、ヤケ酒ですっかり悪酔いして、ジョールが趣味で出演していたコメディクラブに、思わず足を運んでしまいます。しかも、ほんの偶然から舞台の上で、しゃべり始めてしまった、ミッジ。

悪酔いして、すっかり暴走状態の彼女の口から飛び出したのは、今まで心の中に秘めていた、女であることの不満と本音の数々。更に下ネタも全開となった彼女は、調子に乗って胸まで露出!最終的に許可なくストリップをしたということで警察官に連行され、そのままパトカーで警察署に!

一夜にして、家庭の主婦から犯罪者へと転落したかに思えたミッジ。しかし、彼女の話芸と才能を認めたコメディクラブの女性従業員、スージーによって、スタンダップコメディアン(漫談家)として新たな人生のスタートを切ることになるのです。

生活と二人の子供のため、実家に戻ったミッジは、デパートの化粧品売り場の店員となって働き始めます。さっそく新しい職場での人間関係や出来事を、舞台で漫談のネタにするのですが、予想に反してこれが全くウケず、すっかり自信を失ってしまうことに。

初めての挫折を味わった彼女は、ベテランのコント作家にネタの構成を頼みますが、これも的外れな内容ばかりで再び大コケ!更に、観客の反応とスベることに対しての恐怖から、ついにミッジはマネージャーのスージーともケンカ別れしてしまうのですが、果たして彼女の前途はいかに?

ズバリ、見どころはここ!

酒に酔った勢いで、自分の不幸や隠していたホンネを飾らずにぶちまけたら、大ウケしたのに対し、新たな生活がいかに刺激的で楽しいものかを語ると、観客が冷たい反応をする。

その恐怖から、自分の最大の武器である、女性ならではの視点や個性を忘れて、安易に他人の力に頼ろうとしてしまった、ミッジ。それは今まで彼女が送ってきた、家庭の主婦として夫に頼る生き方と、何ら変わらないものでした。

そんな彼女に浴びせられる、スージーからの厳しい助言、「あんたはそんな、つまらなくて弱い女じゃない。漫談家になりたいなら、失敗から学びな!」。

彼女の言葉に、「自分の人生は自分の力で切り開くもの」と初めて気が付いたミッジが、この失敗を糧に再びステージに立つ決意をする姿こそ、正に女性の自立と社会進出の困難さを象徴するものだと言えるでしょう。

実際、ドラマの中でミッジが披露するネタは、どれも彼女自身の悲惨な体験や、普段は公にしない女性特有のあるある問題が中心なのですが、実は彼女がユダヤ人だという点も、アメリカのコメディ界を語るには重要な点。人種差別や偏見、不幸やコンプレックスを笑いに変える上で、彼女の人種やシングルマザーの境遇は、むしろ有利、というか最大の武器になるからです。

ミッジが自分の不幸や悩みを、こうして舞台で笑いのネタとして消化することで人々が共感し、更には彼女自身も救われるという描写。

実はこれって、普通の主婦の投稿がバズって、一夜にして人気者になったり、ふとした投稿がきっかけで、自分の思いがけない才能が評価されるという、現代のツイッターやSNSへの投稿そのものなのです。

事実、第7話でミッジが有名女性漫談家を舞台でネタにしたことで、各有名新聞の記事で散々に酷評されるという描写は、現在に例えるなら“ネット大炎上”といったところでしょうか。

このように、単に昔のよきアメリカを懐かしむのではなく、この時代の女性の姿を通して現代の女性の姿や問題点を描くという手法も、このドラマが多くの女性に支持されている理由なのでしょう。

もちろん、基本は笑って楽しめるコメディドラマなのですが、実は1950年代末~60年代初頭にかけてのアメリカの社会状況が学べるのも、このドラマの魅力の一つとなっています。

例えば、公民権運動や赤狩りなど、国民の人権に関わる重要事態がドラマの中に登場するだけでなく、当時の実在した女性活動家である、ジェイン・ジェイコブズが、ニューヨークの都市再開発反対の演説をしている所に、ミッジが遭遇するなど、急激に女性の発言権や活動力が増していった、当時のアメリカの社会状況が自然と勉強出来てしまうのが見事!

今まで家庭の中と、子供たちの世話だけが彼女の全てだったミッジが、この街頭演説で自分の考えを公衆の面前で語ることになるのですが、何の知識も持たない彼女が言った言葉、「無知な自分に腹が立つ」「問題を知らなければ女性が立ち上がることはない」を聞いたジェイコブズが、「今の言葉メモしといて」とスタッフに告げるなど、一市民の声が実は世の中を良い方向に変えるのに、一役買っていたという展開は、見ていて思わず応援したくなるほど!

更に、ミッジに漫談の世界の素晴らしさを教えることになる、実在の伝説的スタンダップ・コメディアン、レニー・ブルースを始め、レッド・スケルトンなど当時の有名コメディアンが、続々実名で登場するのも、コメディファンには魅力の一つと言えるでしょう。

更にオススメなのが、登場人物の衣装デザインやインテリアのカッコよさ!レトロでありながら、どこかポップで可愛い感じのするものばかりで、逆に現在でも十分通用する新しさを感じてしまいます。

加えて、全編に流れる当時の音楽が、ミッジの明るいキャラクターに良く合っていて、よりドラマを盛り上げてくれる点も見逃せません。

最後に

突然の不幸がきっかけで、自分でも気づかなかった才能を見いだされ、女性の漫談家として舞台に立つことになった、ミッジ。

家庭の主婦として夫のために尽くし、子育てと家事をこなすのが女性の理想の生活であり幸せなのだと、今まで何の疑問も抱かずに思い込んでいた彼女が、初めてホンネや不満を自分の言葉で公に発信したことで、本当の自分の居場所と、自身が輝ける生き方を、自分の意志で選択するようになっていく。

その姿は、正に映画『アリー スター誕生』か、NHKの朝ドラの世界!

ミッジが選んだ、自身の不幸や悩みを笑いのネタに変えるという行為は、言い換えるなら自分をもう一度見つめ直して、客観的に考えるということ。

失恋や仕事の失敗、ダイエットや美容の悩みまで、心が悲鳴を上げそうな時にこそ、この『マーベラス・ミセス・メイゼル』の笑いがきっと力を与えてくれるはず!

1話完結の上に、第1シーズンは全部で8話と、週末に一気見するには最適な長さなので、全力でオススメします!

滝口アキラ
ライター:滝口アキラ
「シネマズPLUS」公式コラムニスト、雑誌「昭和40年男」ライター。専門は映画コミカライズ研究。

 

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シーズン1

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シーズン2

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※2019/2/5時点では、シーズン2の吹替版はないようです。