『Dr.パルナサスの鏡』に隠された亡きヒースと人気俳優たちの友情

おたのしみ

『ブロークバック・マウンテン』でアカデミー主演男優賞にノミネートされ一躍有名となった豪州出身の人気俳優ヒース・レジャー。彼は2008年に急性薬物中毒により惜しくもこの世を去った。

彼の偉大さを象徴するかのように、死後『ダークナイト』でアカデミー助演男優賞を受賞する奇跡を起こしたヒースは、今でも世界中から愛され続けている。彼が最後に出演していた映画は『ダークナイト』だと思っている方も少なくないだろう。

しかし実は、彼が急死したのはテリー・ギリアム監督作品『Dr.パルナサスの鏡』の撮影期間中だったのだ。

『Dr.パルナサスの鏡』は幻想的なファンタジー。自称1000歳のパルナサス博士(クリストファー・プラマー)率いる旅芸人一座は、移動式劇場でロンドン各地をまわっていた。彼らの最大の見世物、それは観客の願望の世界を見せるという不思議な鏡。しかしそこにはある秘密があったーー。ある日、移動中に首吊りをしているトニー(ヒース・レジャー)を見つけた一座は、彼を救出。トニーはしばらくのあいだ行動をともにして舞台が繁盛するように協力するが、彼もまた、大きな秘密を隠していた。

タイトルにもあるように、鏡は本作にとってかなり重要なものである。ヒースは“鏡の中の世界”の撮影を残したままこの世を去ったため、本作は製作中止の危機に陥った。しかしそこに現れたのは、かつてヒースと交友関係にあったジョニー・デップ(『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ)、ジュード・ロウ(『シャーロック・ホームズ』シリーズ)、コリン・ファレル(『マイアミ・バイス』)のハリウッド俳優3人だ。

彼らはヒースの代わりにトニー役を即時に引き受けた。鏡の中は、鏡に入った者の願望によって異なる。その設定をうまく利用し、3人はトニーを好演。3人の“顔が変わっていく”トニーは、幻想的なファンタジーにより深みを加えた。もともとこの3人はキャスティングされていたのでは?と勘違いしてしまうほどだ。彼らの友情のおかげで素晴らしい作品が仕上がった。

これだけですでに感動的なエピソードなのだが、素晴らしい秘話はほかにも。

ヒースが亡くなったときに残されていた遺言は古く、当時2歳の娘マチルダのことは何も記されていなかった。それを耳にした3人はなんと出演料を受け取らず、代わりにマチルダに寄贈したのだ。この出来事は、当時アメリカやイギリスで大きく報じられ、監督のテリーも「この作品は素晴らしい人と素晴らしい出来事で溢れている」とコメント。彼らのヒースに対する思いやりや友情がなければ、本作が完成することがなかった……そんな愛や奇跡が溢れている作品なのだ。

筆者は、基本的にスリラーやホラー映画を基本的に好んで鑑賞し、本作に出会うまでファンタジーという作品に興味がなかった。しかし、本作は私のようなファンタジーを毛嫌いする人にも自信を持っておすすめできる。

なぜなら「本当にファンタジーなのか?」と疑ってしまうほど、現実世界の残酷さも描かれているからだ。

一般的なファンタジーには登場しない酔っ払ったクラブ帰りの男や、高級品を身にまとうマダムなども登場する。現実的面と、幻想的な面、2つの顔をもつ作品だ。衝撃的なストーリーラインや、鬼才と呼ばれるテリー監督が生み出すカラフルで少し強烈で独特な映像美にも注目してほしい。

トキエス
ライター:トキエス
映画ライター。兵庫県出身。サスペンス・スリラー作品記事をメインに執筆。趣味は海外映画のロケ地巡り。

 

Dr.パルナサスの鏡のおすすめ視聴方法

U-NEXTでみる

Dr.パルナサスの鏡をU-NEXTでみる

 

huluでみる

Dr.パルナサスの鏡をhuluでみる